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珍しい、美人のおばけ
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お露を化けさせたのは、彼女本人の想いの深さではなく、好きな人に連絡を取る手段さえなかった当時の社会の不自由さである、と私は思う。なぜって、一目ぼれをして、その後、相手と再度口をきく機会もないうち、つまり、バレンタインのチョコを渡す機会も来ないうちに死んでいるのである。あんまりではないか。しかし、恨む間もなく死んだということで、オバケになったときには、美しい。 これに比較して、最近のお嬢さんたちならば、とりあえず通信手段には恵まれているから、恋煩いのために命を削るなんてことは、あまりしないで済んでいるのではないか。携帯の番号を聞き出したり、グループで遊びに行ったりしているうちに振られるならば、諦めがつきやすく、わざわざ化ける気もしないだろう。 …とすると、このごろは、きれいな幽霊の数は減ってるのかな。幽霊の数自体、減ってるのかな。どうなんでしょうね。 参考までに書いておけば、作者、三遊亭円朝は、今からほぼ一世紀前、1900年に没した落語家である。落語家の作だから、当然、わかりやすく、面白いストーリーである。 読んでみれば、オバケの出る部分はほんのちょっとなので、「怪談」とタイトルについているのはサギだと思うし、なんだか人気が出たので連載回数を突然増やしたマンガみたいな、ご都合主義のストーリー展開でもある。でも、観客の気持ちを引き込むに不都合はない。誰でも胸に覚えがある片思いの苦しさを題材にして、こういう突拍子もないメロドラマも「あり」なのだ。 まあ、文句は、あえて言わないでおこう。それよりも、こんな連続ドラマ的波乱万丈の人情噺を、明治時代の口語で読む幸せの価値のほうを強調しておきたい。発表当時、この速記本は、庶民にも読みやすい口語体で評判になり、雑誌の売上にずいぶん貢献し、言文一致運動の牽引役となって、二葉亭四迷などに影響を与えたりもしたらしい。旧仮名遣いさえ気にならなければ、ルビがふんだんに振ってあるので、現代の私たちにとっても、読みやすい一冊である。 <蛇足>三遊亭円朝の作品は、青空文庫でも読むことができる。ただし「怪談 牡丹燈籠」は2006年5月現在、まだ「作業中」と出ていた。 |
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