027 八咫烏

立派な役で出てくるからすといえば、日本のやたがらす。八咫烏って書きます。熊野神社のマークや、日本サッカー協会のシンボルマークについてる、三本足のからす、あれです。

「古事記」「日本書紀」「古語拾遺」などに登場する、有名な瑞鳥です。やたがらすは、天からつかわされた鳥で、神武天皇一行が熊野、吉野の山々を抜けて大和へ至り、そこで大和朝廷をおこすまでの道案内をしたんだそうです。天照大神につかわされたので、太陽の鳥です。

太陽の鳥って言われると、鳳凰/火の鳥系の華やかで明るいイメージが強くなって、真っ黒のからすと太陽の組み合わせは、納得するのに少々難儀します。でも、日本各地に無数にある熊野神社でけっこうマークのデザインに使われてるだけでなく、朝鮮の民画で、赤い太陽をバックにしたからすの図柄って見ますし、中国でも三本足のからすが太陽に属している、という考えがあるそうです。前回のアメリカンインディアンの神話でも、空に太陽をかけたのはからすでした。昔の人なら即、理解できるような関連があるのは間違いなさそうです。

建国神話中の重要な役割を担いながら、同時に各国に足場を持ってるっていうのも、どうも納得しにくいです。建国神話は輸入品の思想の組み合わせじゃなくて、純国産であってほしい。…と思うのは多分、国境線にこだわる現代人の発想で、昔はそんなことぜんぜん関係なかったんでしょうけれど。

なんでも韓国では、大統領が使う国璽(国の象徴として捺すハンコ)の絵柄を三本足の鳥のものに変えようという話があるそうです。現在のものは鳳凰、その前の絵柄は亀だったのだとか。

しかしまあ、三本足とはまた不思議な形ではありませんか。身体の部品が多いのは、ヤマタノオロチやキングギドラや三つ目など、化け物系ではめずらしくありませんが、不気味さアップのための形態変化ではなくて、こういう、ただ「変」な印象が強い形態って、少ないような感じがします。ちょっと人を食ったようで、なんとなく、からすっぽいような気もします。

なぜ、太陽とからすなのか? なぜ建国神話に出てくるのか? なぜ三本足なのか?

こういう根本的かつ漠然とした問いの答えをスカっと説明してくれる記述には、まだめぐりあっていません。

2006年11月

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