026 創造主、からす

アメリカンインディアンの神話が好きで、機会あるごとに少しずつ読んでいます。なんと、からすが、世界創造を担当してるんです。それも、カァーカァー言いながら、もののはずみで作っちゃったらしいです。立派な神様じゃなくて、からすが創造主…。この軽さが気に入っています。

からすは、たいくつしていた。あまりのたいくつに、精霊の領域、鳥の国を出て、外の世界を見に行くことにした。くちばしに石ころをひとつくわえて飛び立ったからすは、飛んでいるうちにうち疲れてきたので、石ころをぽとりと落とした。その石ころは海に落ち、どこまでも広がって、今人間が住んでいる、この大地になった。

こんだけです。これが、世界の成り立ち。笑っちゃいます。

もうひとつ、からすが世界に光をもたらす話もあります。そちらも力の抜けてることでは引けをとりません。

光と水の守護者、ワシには娘がいた。娘は美しかった。彼女に恋をしたからすは、早速言い寄った。当時からすは雪のように白い、ハンサムな鳥だったので、娘もまんざらではない様子で家に呼んでくれた。ワシの家には、太陽、月、星、火、水があった。からすはこれらをこっそり盗み出し、まず太陽を空にぶらさげた。すると、世界が明るくなった。夜になると、月と星を空にぶらさげた。すると、夜の闇がなくなった。続いて水を撒くと、これが世界の真水の元となった。そして火をくちばしにくわえたまましばらく飛んでいるうちに、すっかりいぶされて体が黒くなってしまった。さすがに熱く感じたので、火をぽとりと下へ落とした。すると火は岩の間に入っていった。

つまり、「色男でコソ泥」というキャラのからすの、ほんの気まぐれで、世界が明るくなったわけです。

こういう間抜けな創造神話を語り伝えるアメリカンインディアンって、すごいなあ、って思います。かえってすがすがしいじゃないですか。よほど権力の集中が嫌いだったんでしょうね。

からすは、真っ黒な色のせいか、賢そうな顔つきのせいか、雑食のずうずうしさのせいか、世界各地の神話、民話に登場する鳥です。それも、けっこう重要な役割で出てくることが多いのです。どうも気になるので、少し連続してからす方面に目を向けてみます。

2006年11月

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