023 妖怪力

マンガと妖怪を町おこしの材料にするなんて、いかがなものか。そう言った人、たくさんいたでしょうし、言いたかった人もたくさんいたでしょう。それでも、境港では実行した。その軽さ、カッコイイな、と思います。

鳥取県境港市。今回、妖怪検定で訪れる機会を得たわけですが、前からずっと行ってみたかった場所でした。なにしろ妖怪のブロンズ像が120体(2006年10月16日現在)もあるというところです。歴史上の偉人とか、空=未来に向かって手を広げる健康的な子供たち、とかじゃなくて、妖怪ぞろぞろ、なんです。ブロンズ像というものの歴史的意味を脅かしそうな快挙。

像は、写真で見るよりずっと美しくて、とても感心しました。思わず触りたくなる人が多いらしく、てらてら光っているものがたくさんありました。わが子が妖怪像によじのぼった姿を、デジカメやビデオにおさめているお父さんたちの姿も見ました。こんなに愛されて、境港の妖怪たちは幸せです。

そこまでで既に充分愉快だとというのに、米子から境港まで、全部で16駅分のJR境線の駅名が妖怪化している。これは笑えます。起点の米子は「ねずみ男駅」、終点の境港は「鬼太郎駅」。その間に「べとべとさん駅」「砂かけ婆駅」「泥田坊駅」「すねこすり駅」などがあるわけです。駅名看板はイラストつき。境線には妖怪の絵を車体に描いた妖怪電車が走っています。

境港から隠岐へ渡るフェリーの船体もイラストで飾られ、鬼太郎フェリーという名前です。駅前公園の電灯は、目玉の束でした。運送会社の倉庫の壁面も、妖怪だらけです。駅から水木しげる記念館へいたる水木しげるロード周辺を歩くと、次々とこういうものが見つかります。妖怪化は、深く広く進んでいるのです。

その上、お土産が面白い! 妖怪饅頭、妖怪絵葉書、妖怪ケータイストラップなど当然予想できるものは、初歩も初歩。中級になると、妖怪汁(缶ジュースです)、鬼太郎ビール、鬼太郎かまぼこ、妖怪花札、一反木綿ふんどし。上級は…現地でごらんください。妖怪は人間より商売上手らしく、笑っているうちにどんどんお金が出て行きます。

タクシーの運転手さんによれば、「松江は城下町だからスーツ。米子は商人の町でジーンズ。境港は漁港だから、ゴム長」…つまり、本音で勝負できる気質の町だ、ということらしいです。妖怪たちは、よい根拠地を見つけたものだ、と嬉しくなりました。

境港の妖怪力はまだまだ拡大しそうです。この際、思い切って鳥取県全体を妖怪にささげちゃうってどうでしょうか。お隣の島根県には、神様が集まる出雲があります。化け物が集まる場所も、あっていいと思います。

日本のおばけにさらなる栄光あれ!

2006年10月


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