003 奪衣婆
新宿といえば…。
新宿二丁目に、奪衣婆をまつってるお寺が二つもあるの、知ってますか。私は東京出身のくせに、最近までこいつを見たことがありませんでした。
正受院と太宗寺。どちらも、それほど大きなお寺じゃありません。
奪衣婆ってのは、三途の川岸で亡者の衣をはぐ役の老女です。「おばけずかん」の読者に、しょうづかのばばあ、っていう名前もある、って教えてもらったことがあります。
髪はざんばら。顔はしわくちゃ、目をぎょろりと見開いている。着物の前をだらしなくはだけて、痩せこけた肋骨と垂れ下がったお乳が丸見え。片ひざたてて、片手に着物を持っている。
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この形は決まっているもののようで、どちらの像もそっくり同じでした。
そんなものが信心の対象になる理由って、なんでしょう。「子育て」「咳止め」「妓楼の商売神」で、江戸中の信仰を集めた、などと看板に書いてありました。どうも納得できない。
看板を見て首をかしげていると、小学生の女の子が二人、学校帰りのランドセル姿でひょいとやってきて、奪衣婆の像のおさめてある祠の前で手をあわせ、ほんの一、二秒黙祷し、またすぐ走って去っていきました。ごく日常的に見える動作でした。
墓地へまわると、女性名のお墓がたくさんあります。無縁仏はもっとたくさんあります。説明に、この寺は遊女の投げ込み寺だった、なんて書いてある。「投げ込み」です。「駆け込み」じゃなくて。わー。
新宿は、角を曲がるたび、何が出るか予想つかないのがいいです。
また。
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